【この記事の執筆者】
相続税の研究を愛する相続専門の税理士。23歳で税理士試験に合格し、国内最大手の税理士法人で6年間の修行を積んだのちに独立。円満相続税理士法人の代表を務める。
こんにちは、相続税専門の税理士の橘です。
贈与税がなんと!2500万も非課税になる制度があるのをご存知ですか?!
通常の生前贈与では年間110万までしか非課税になりません。それと比べると非常に太っ腹な制度だと思いますよね?
一見お得そうに見える制度なのですが・・・
実は、この制度は使ってもまったく節税にはならないのです。
むしろ、使わない方が節税になります。
この制度は節税になるのではなく、税金の支払いを将来に先延ばしにすることのできる制度なのです。
そのメカニズムをイラストを使いながら解説しました。
まずは、そもそも相続時精算課税制度とはどういった制度なのかということをお伝えしていきます。
この制度は一言でいうと、「生前贈与をするときは2500万円まで贈与税を非課税にしますが、贈与した人が亡くなった時には、その人の遺産だけでなく、過去に生前贈与した財産も一緒に、相続税を課税しますよ」という制度です。
わかりづらいと思いますので、事例を使って解説します。
例えば、平成25年の時点で1億円持っている甲さんという人がいたとします。
この甲さんが、相続時精算課税制度を使って、子供に2500万円を贈与したとします。この時に贈与税は1円もかかりません。2500万まで非課税ですので。
贈与をした後、甲さんの手元には、いくらの財産が残っていますでしょうか?
答えは・・・
7500万円ですよね。1億円から贈与した2500万を引けば、7500万となります。
その後、時は流れ、平成29年になりました。
悲しいことに、この甲さんはお亡くなりになってしまいます。
この時に、甲さんの手元に残っていた遺産はいくらかというと、7500万円です。
では、この7500万に相続税がかかるのかと思いきや・・・
ここで出てくるのが、相続時精算課税制度です!!
相続時精算課税制度を使って生前贈与した財産は、2500万まで贈与税が非課税になります。
しかし、その人が亡くなってしまった時には、手元の財産だけではなく、この相続時精算課税制度を使って贈与した財産も含めて相続税を計算しなければいけません。
つまり先ほどの甲さんにおかれましては、手元の財産7500万と相続時精算課税制度を使って贈与した財産2500万を足した、1億円に対して相続税が課税されるというわけです。
「2500万まで非課税」と書かれているのでお得そうに見えますが、結局、最終的には相続税が課税されます。非課税にはなっていないのです。
ここで、この制度の名前をもう一度よくご覧ください。
相続時精算課税制度
この制度は、【贈与をする時は贈与税を非課税にしますが、相続がおきた時には、非課税にした分を精算して課税する制度】という意味なのです。
つまり、贈与税が非課税になるだけであって、相続税は課税されますので、節税というわけではなく、税金の先送り、というのが実態です。
相続時精算課税制度の一番恐いポイントは、一度この制度を選択すると、永久にこの制度が継続される点にあります。
ここも難しいポイントですので、事例を使って解説します。
例えば、先ほどの1億円もっている甲さん。平成25年に相続時精算課税制度を使って1000万円を贈与したとします。
2500万の非課税枠に収まりますので、当然この時、贈与税は課税されません。
その後、甲さんは平成26年に、再び1000万円を贈与しました。
この場合、どのような取り扱いがあると思いますでしょうか?
答えは・・・・
この1000万円も贈与税が非課税とされるのです。
考え方としては、平成25年に贈与をした1000万と、平成26年に贈与した1000万を合計した2000万という金額は、相続時精算課税制度の非課税枠2500万に収まりますので、贈与税は非課税とされるわけです。
この相続時精算課税制度における2500万の非課税枠の考え方は、1度きりに使えるのではなく、一生の累計額で使える金額なのです。
確かに贈与税は非課税となりますが、先ほどの甲さんが亡くなった時には、平成25年に贈与した1000万も、平成26年に贈与した1000万にも相続税が課税されることになります。
相続時精算課税制度は一度使うと、自動継続で取消は一切できません。
実務上、よく起きる現象として、相続時精算課税制度を使って贈与をしたあとに、通常の年間110万円の非課税枠を使って贈与をしてしまうケースです。
例えば平成25年に相続時精算課税制度を使って1000万贈与をした後に、平成26年に110万円、平成27年に110万、平成28年に110万の贈与をしたとします。
この場合、この人が亡くなった時には、手元の財産に1330万の財産を加えて相続税を計算しなければいけないこととなります。
このことから何が言えるとかというと、一度、相続時精算課税制度を使った場合には、二度と110万の非課税枠を使うことができなくなってしまうのです。
通常の生前贈与は110万までしか非課税となりませんが、その人の財産を減らすことができるので、将来の相続税を減らすことができます。
一方で相続時精算課税制度は、贈与税は2500万まで非課税ですが、結局、全て手元の財産に足し戻して相続税を計算するので、将来の相続税を減らす効果は一切ないのです。
このことから、税金の負担を少なくしたいのであれば、相続時精算課税制度を使ってしまうと、二度と110万の非課税枠が使えなくなるので、使わない方がいいのです。
例えば、先ほどの甲さんが、平成25年に1500万、平成26年にも1500万贈与したとします。合計3000万となりますので、非課税となる2500万を超えることになります。
この場合には、2500万を超えた500万円に対して一律20%の贈与税が課税されます。つまり100万円の贈与税を払わなければいけないのです。
この贈与税100万円については、相続が起きた時に、相続税から控除されます。
このように、一度、相続時精算課税制度を使った場合には、その後、贈与を受ける都度、必ず贈与税の申告書を税務署へ提出しなければいけないのです。結構大変ですよね。
例えば、3500万円の財産を持っている乙さんという人がいたとします。
この乙さんのお子さんが自宅を購入することになったので、頭金として1000万を贈与してあげたいと考えました。
しかし1000万も贈与した場合には、177万も贈与税がかかってしまいます・・・
せっかく、少しでも足しにしてほしいのに、こんなに税金かかってしまっては贈与も断念するしかありません・・・・
そんなときにこそ!相続時精算課税です!
この乙さんが相続時精算課税制度を使えば、1000万円を非課税で贈与してあげることができます。
贈与をした後の乙さんの財産額は3500万から1000万を引いた2500万です。
将来、この乙さんが亡くなってしまった時には、手元の財産2500万に、贈与をした1000万を加算した3500万で相続税を計算することとなりますが、3500万は相続税の基礎控除の金額を下回ります。※基礎控除のことを詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください→相続税の基本のキ!基礎控除ってなーに
つまり相続税がかからないのです。
このようなシチュエーションであれば、相続時精算課税制度は非常に良い制度になるというわけです。みんなハッピーです♪
また、将来少しだけ相続税がかかりそうな人が、生前中に110万以上の贈与をしなければいけないような事情がある場合にも、この制度は有効です。贈与する金額にもよりますが、贈与税の負担と相続税の負担を比べて、どちらが有利になるかによっては、あえて、相続税で課税する方が有利になることもあります。
その他にも、あえて相続時精算課税制度を使った方が良いシチュエーションを、動画にまとめましたので、ご興味ある方は、是非、ご覧くださいませ↓
相続時精算課税制度は、贈与をする時には非課税ですが、相続が起きた時に、非課税にした分を精算して課税する制度です。
この制度は節税をしたい人のための制度ではなく、将来的に相続税の心配のない人や、少しだけ相続税の負担が出る人が、110万を超える生前贈与しなければいけない事情があるときのための制度です。
将来的に、財産額がこの基礎控除を下回る見込みの人におかれましては、相続時精算課税制度は効果を発揮します。しかし、そうではない人は、この制度を使うと節税にはなりませんので、節税にならなくてもいいから早く贈与したい!という人以外は使わない方がいいです。
この仕事をしていると、本当に相続対策は薬とよく似ていると感じます。いくら良い薬であっても、骨折している人に風邪薬を飲ませても骨は治りません。逆に副作用で身体を悪くするかもしれません。
それと同じように、相続時精算課税も、将来的に相続税のかからない人が使えば効果抜群ですが、将来的に相続税がかかる人に使った場合には、むしろ逆効果になることがあります。
また、贈与税を支払うことを極度に嫌がる方も多いですが、贈与税の計算をしてみると、意外と大した税額にならないケースも多々あります(;^ω^)※弊社の無料のメールマガジンかLINE@に登録した方には、贈与税を簡単に計算できるエクセルシートと贈与契約書をプレゼントしていますので、是非、ご登録くださいませ♪
相続時精算課税制度を使うことにより、税金で損をすることも、得することもあります。相続時精算課税制度のメリットデメリットを日本一わかりやすく解説しました♪
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