円満相続税理士法人 税理士
学生時代に税理士試験の受験を始め、在学中に4科目取得し群馬県の会計事務所に就職。売上規模数十億円の企業の法人税、相続税を担当しつつ25歳の時に税理士試験合格。
皆さんこんにちは。
円満相続税理士法人、税理士の加藤です。
相続税は基本的には現金で一括納付をする必要があります。
しかしながら、納税が出来るだけの現金が無い場合には「物納」といい、物で納税をする方法も認められます。
実は、物納については平成29年に大きな改正がありました。
それが、
「上場株式等の物納順位を1位にする」
というものです。
物納が出来る「物」については優先順位が決まっているのですが、上場株式等の順位が土地などと同じ、第1順位となったのです。
この改正によって、これまでは土地などを物納の対象としていたケースであっても、上場株式等を選択できるようになったので、上場株式等の物納の重要度が増すことになりました。
そこで今回は、上場株式等を物納するメリットと、その注意点を解説しますので、ぜひ参考にしてください!
上場株式等を物納するメリット
まずは上場株式等を物納することによるメリットを解説します。
譲渡所得税が発生しない
上場株式等を物納するメリットで最も大きなものは、
「譲渡所得税が発生しない」
ということです。
例えば、取得価額5,000万円、相続税評価額1億円という株式があったとします。
この株式を売却して相続税を納めようとした場合には、利益の部分に所得税が発生します。
仮に1億円で売却が出来た場合、約1,000万円の所得税(※)です。
※(1億円-5,000万円)×20%で計算。取得費加算の特例等は考慮していない。
しかし、この株式を物納した場合はどうでしょうか?
実は、株式を物納した場合には譲渡には該当しない、という取り扱いがあります。
よって、株式の利益がどれだけあっても、物納によって譲渡所得税は発生しないのです。
所得税が発生しない分、多くの相続税の納税をすることが出来るので、これは非常に大きい物納のメリットと言えるでしょう。
相続発生後の価値の下落が影響しない
上場株式等を物納した場合は、相続税評価額で相続税を納税したこととなります。
つまり、相続発生後に株価が下落をしても、その下落の影響を受けないということです。
例えば次のようなケースでは、物納が有効になる可能性が高いです。
~前提~
・対象株式:A株式
・相続税評価額:1,000万円
・納税時の株価:500万円
このようなケースだと、A株を売却して相続税を納めた場合には500万円しか納税が出来ません(便宜上、売却時の所得税は考慮していません。)
しかしA株を物納すると、物納するときの株価が500万円であったとしても、相続税評価額である1,000万円分の納税をしたことに出来るのです。
上記のように、相続発生後に株価が下落したような銘柄を物納することで、より効率的な納税が可能となるのは大きなメリットです。
手続きが簡便
従来の物納制度は、土地を対象とするケースが大半でした。
しかし土地を物納する場合、境界の確定や測量などといった調査が必要になり、その手続きが非常に多いことがデメリットでした。
しかし株式等の場合には、必要書類などが土地の物納と比較して少なくなるため、手続きのハードルは非常に低くなっています。
例えば、土地を物納するときに必要になる書類は、次のようになっています。
これに対して、株式等を物納する際に必要になる書類は、次の通りです。
このようにしてみると、株式等の物納が、土地と比較するといかに簡便になっているのかが分かるかと思います。
手続きの面でも、株式等の物納はメリットがあるのです。
上場株式等を物納するときの注意点
ここからは上場株式等を物納するときの注意点を紹介します。
国内に所在する財産でなければならない
物納の対象となる財産は、国内にある財産に限られています。
例えば外国企業の株式については、海外に所在する財産として取り扱われるため、物納の対象にならないケースがあります。
投資信託についても、発行法人の本店や主たる事務所で所在地を判定される場合がありますので、注意が必要です。
物納を検討する場合には、対象となる資産が国内財産か否かも、事前に確認をしておくとよいでしょう。
収納価額は相続税評価額
上記でも説明していますが、物納をしたときに、納税に充てられたとされる金額は、相続税評価額となります。
したがって、相続発生後に株価が上昇をしたとしても、その上昇は加味されないこととなります。
もし株価が上昇をした銘柄がある場合、売却をして納税をした方が有利になるケースがありますので、こちらも注意が必要です。
取得費加算の特例を加味する
含み益がある株式等がある場合には、物納が有利になるという説明は上記の通りです。
しかし、含み益がある株式等を譲渡した場合であっても「取得費加算の特例」を適用すると、所得税がそこまで発生しないという可能性があります。
取得費加算の特例は、相続で取得した財産を売却したとき、その財産にかかった相続税の一部を譲渡所得の経費に出来るという特例です。
この特例を忘れて、物納と売却のどちらが得になるのかをシミュレーションすると、結果が変わってしまう恐れがあります。
株式等を売却した際の所得税の計算では、この「取得費加算の特例」を忘れないように注意しましょう。
まとめ
今回は株式等の物納について、そのメリットや注意点を解説してきました。
物納は昔に比べると、その許可の数が激減していますが、法改正があったことにより、使い勝手が良くなった点もあります。
その最たる例が、今回ご紹介した株式等の物納になります。
もし皆様の中で、株式等の物納について検討している方がいる場合は、ぜひ税理士に相談をしていただければと思います。
弊社は相続税を専門としている税理士法人で、物納などの手続きも対応可能ですので、何かあれば、お気軽にお問い合わせください!