名義預金に限らず、財産の名義は相続人であるものの、実質的な真の所有者は被相続人であるものを「名義財産」といいます。
相続税の税務調査のポイントは、名義預金を中心とした「名義財産」であるといっても過言ではありません。
それでは、実際の判決を基に「名義財産」のポイントについて見ていきましょう!
円満相続税理士法人 税理士
大学在学中に税理士を目指し、25歳で官報合格。大手税理士法人山田&パートナーズに入社し、年間30~40件の相続税申告に携わりました。丸6年間の実務経験を経て退社。地元関西に戻り、円満相続税理士法人に入社しました。現在も相続税申告を中心に業務に励んでいます!
名義預金とは
名義預金とは、名義人と真実の所有者が異なる預金のことをいいます。
税務調査で最も問題となる名義預金については、こちらで詳しく解説しています♪
名義預金の判断基準
相続税調査における名義財産の一般的な判断基準は、下記の5要件を総合的に勘案して判断するとされています。
① 財産の購入原資の出捐者は誰か
② 財産の管理及び運用は誰が行っていたか
③ 財産から生じる利益は誰が受け取っていたか
④ 被相続人と名義人や財産を管理運用している人との関係性は?
⑤ その財産を被相続人名義ではなく、名義人名義とすることとなった経緯は?
妻名義の預金が名義預金とされた事例
財産の帰属の判定において、名義がだれであるかについては、重要な一要素ではあるものの、日本においては、夫が自分が扶養する妻名義の預金等の形態で保有することは珍しいことではありません。
そのため、妻名義であることの一事をもって妻所有であると断ずることはできないとされています。
さらに、この事例においては、妻名義預金等についての管理及び運用は妻自身が行っていた旨が主張されています。
・取引に係る書類の記入や実際の手続きは妻自身が行っていた
・被相続人が病気で入院した後においても、妻は入院前と同様の取引を行っていた
・銀行担当者は、妻に対して証券取引等の説明を行っており、被相続人は取引に口出しをすることはほとんどなかった。
つまり、妻名義の預金等のについては、妻が自らの判断に基づき主体的に行っていたということがわかります。
しかし、夫婦間においては、妻が夫の財産を管理・運用することはさほど不自然なことでなく、管理・運用をしていたからといってこれが妻が所有者であるという決定的な要素とはいえないとされています。
また、この事例においては、土地や建物についても生前贈与を行い、登記変更・贈与税申告を行っているが、当該妻名義の預金については、贈与契約書もなく、贈与税申告も行っていなかったため、生前贈与は成立していないとされています。
一方で、自身の死亡後における妻の生活を心配して名義を妻にしたという動機については、自然なものであると認められています。
要約すると、当該預金を妻名義にした動機については認められるものの、日本においては、妻が夫の財産を自分名義にし、管理運用することは自然なことで、この事実をもって真実の所有者が妻であるとは認められない。また、他の財産の贈与事実と比較し、生前贈与はされていないと判断されました。
(東京地裁平成20年10月17日判決・その控訴審東京高裁平成21年4月16日判決)
つまり、夫婦間の名義預金については、子や孫との名義預金よりも判断が非常に難しく、それぞれの事情や背景を総合的に判断して、真実の所有者が判断されることになります。
どうすれば、真実の所有者を妻と認めてもらえる?
それでは、税務調査において、問題とならないようにすればどのようにすれば良いか?が気になるところですよね。
多少、面倒ではありますが、1年に1回、夫婦間でも贈与契約書を交わしておくことをおすすめします。
これまで贈与契約書なんて作成してきませんでした。夫婦間のことだから、日付を遡って作成しても良いですか?
それはダメです。日付を遡って作成したことが調査官に見つかれば、重加算税の対象となる可能性もあるので、絶対にやめましょう。
過去の日付で契約書を作成する行為は、「バックデイト」という文書偽装行為にあたります。これが調査の際、明らかになれば重加算税の対象になる可能性もあるので、絶対にやめましょう。
なお、バックデイトは、昔の契約であるにも関わらず、使われている紙や朱肉が真新しいなどの要因で認定されます。
では、過去分の贈与契約書を作っていなかった場合には、どうれば良いでしょうか?
「過去の送金は、生前贈与であったことを確認する」旨の覚書を作成しておきましょう!
合わせて専業主婦のへそくりに追徴課税がされた事例を徹底的に研究し、執筆されているこちらの記事もよろしければお読みください(^^)/
ご参考になれば幸いです♪