【危険】財産が分からないから相続税の申告をしないのは無申告加算税も!

相続が発生したのですが、どんな財産があるのか分からないんです。
相続税の申告は、財産の調査が終わってからやればいいでしょうか?

相続税の申告は、原則として相続発生から10カ月以内に行わなければいけません。
これは、財産の全容が分からない場合でも同じで、この期限を過ぎてしまうと、思いもよらないペナルティが発生してしまう危険があります!

皆さんこんにちは。

円満相続税理士法人、税理士の加藤です。

相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。

それでは、その期間内に財産の全容が把握できなかった場合は、どうすればよいのでしょうか?

今回は、相続税を申告したいけれど、その根拠となる財産が分からない場合について、判例をもとに徹底的に解説していきます!

この取り扱いを間違えてしまうと、無申告加算税などのペナルティが生じる可能性もありますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

財産が分からなくても申告は必要

まず結論からお話をすると、財産の全容が分からない場合であっても、分かるものがあれば申告をする必要があります。

例えば、全体の財産は分からないけれど、土地と建物を持っていることだけは分かっているような場合には、一旦その土地と建物だけの申告書を作る必要があります。

(分かっている財産の合計額が、相続税の基礎控除額を超えていない場合を除きます。)

申告書を一回提出した後に新しい財産が見つかったら、その都度修正申告などを行うことになります!

財産が全く分からないときは?

分かっている財産があれば、その財産だけでも申告をする必要があることは、上で説明しました。

それでは、どのような財産があるのか全く分からないときはどうなるでしょう?

このときは、相続税の計算は出来ないので申告書を作成することも出来ないということになります。

ただ、そもそもの前提として、納税者(ご相続人など)は申告期限までに財産を可能な限り把握するよう努力をしなければいけないのです。

つまり、

特に調べてないけど、よく分からないから申告しませんでした

は通らないということになります。

家の中にある資料や、場合によっては専門家に財産の調査を依頼するなど、出来る限りの調査は行うようにしましょう!

争いがあり財産が隠されてしまった場合

相続税の申告は通常であれば、相続人の方達で協力をしつつ進めていきます。

しかしながら、例えば相続人の一人が財産を隠してしまい、財産が把握できない場合などもあり得ます。

このような状況で財産を把握できない場合であっても、原則としては可能な限り財産の調査を行い、相続税の申告をしなければいけません。

相続税のルールでは、相続争いがあるときは申告期限を延長する、という規定が無いので、申告手続きはしなければならないのです。

無申告加算税について

これまで説明した通り、財産の把握が出来ない場合であっても相続税の申告は行う必要があります。

しかし、例えば財産が分からないから、という理由で申告をしなかった場合には、どうなるでしょうか?

このときは、本来の相続税の他に、「無申告加算税」というペナルティが生じる可能性があります。

「無申告加算税」については、相続人の一人に財産を隠されてしまい申告が出来なかった場合でも、容赦なく発生してしまうので、とりあえずでも申告をすることが非常に大切になるのです。

【国税庁HP:無申告加算税の取扱い】

(通則法第66条第1項の正当な理由があると認められる事実)

1 通則法第66条の規定を適用する場合において、災害、交通・通信の途絶その他期限内に申告書を提出しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められるときは、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるものとして取り扱う。

(注) 相続人間に争いがある等の理由により、相続財産の全容を知り得なかったこと又は遺産分割協議が行えなかったことは、正当な理由に当たらない

参考となる判例

相続財産の全容が分からない場合の相続税申告については、次の裁判が参考となります。

〈大阪高裁平成5年(行コ)第25号無申告加算税賦課処分取消請求控訴事件〉

この裁判は、納税者が

相続人に協力をしてくれない人がいる。
だから財産の全容が分からなかったので、申告が出来なかった。
無申告加算税を課されるのは納得いかない。

と主張したことが発端となっています。

この納税者の主張に対して、裁判所は次のように判断しました。

財産の全部が分からなくても、分かっていたものがあるのなら申告はすべきである。
よって、その申告をしていなかったのだから、無申告加算税は課されることになる。

【以下判決文より抜粋】

納税者が相続財産の全容を把握するため、種々の調査をし、情報入手の努力をした結果、相続財産の一部のみが判明し、その部分だけで遺産に係る基礎控除額を超える場合には(したがつて、その努力をしなかつた場合には、以下の申告方法を安易に許すべきではない。)、判明した相続財産につき、とりあえず自主的に申告しなければならず、これにより相続税の納税義務を確定させるべきであり、残余の相続財産が後日判明したときは修正申告によることとし、したがつて、平均的な通常の納税者を基準としても、相続財産の全容が把握できないからといつて、それを理由に、法定申告期限までに相続税の申告をしないことは許されない

~~~

期限内申告書を提出しなかつたことにつき、無申告としての行政制裁を課されないのは、平均的な通常の納税者を基準として、当該状況下において、納税者が相続税を申告することが期待できず、法定申告期限内に右の申告をしなかつたことが真にやむを得ない事情のある場合に限られるものと解するのが相当であり、~~~本件のように、相続財産の一部とはいえ、これを把握し、納税者として相続税の申告をしなければならないと認識すべきであつた場合には、そもそも、国税通則法66条1項ただし書きの「正当な理由があると認められる場合」に当たらないのである

「財産が分からない」という理由は、無申告加算税が課されない「正当な理由」には該当しないということですね。
これは、争いなどがあった場合でも同様になります。

まとめ

今回は相続財産が把握できない場合の、相続税申告について解説しました。

相続財産が分からないからといって、安易に申告を不要だと考えるのは非常に危険です。

もし相続税のことでご不明なことがある場合には、まずは相続税を専門にしている税理士にご相談ください。

弊社では相続税申告を数多く行ってきた税理士が対応させていただきますので、何かあればお気軽にお問い合わせください!

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